時は平安、藤原家が宮廷の権力を掌握しようと目論んでいたその頃。都で突如起きた女官の連続失踪事件。「鬼の仕業では?」と心配する帝の命を受けた在原業平は、事件を調べることに。その捜査の中で業平は、ひとりの青年を知る。その青年の名は―菅原道真。
教科書に出てくる平安時代の人物、菅原道真と在原業平。
このマンガを読む前の二人のイメージは、道真=堅物のオジサン、業平=プレイボーイの美青年。
なので表紙を見たとき思ったのは、「業平はどこ?」
なんと渋いおじさんの方が業平で、性格悪そうな三白眼が道真であった。
ちょっとゴツいエリート役人の業平様だけどやはり色男、冒頭から人妻とイイコトしてます。
一方、まだ学生の道真くんは書物大好きな学問オタク。冷めた目で無学の者を見下してます。
そして平安京で奇っ怪な事件が起こり物の怪か怨霊かと騒ぎになると、よくある展開では安倍晴明とかの術師が出てきてバケモノ退治をしますが、この作品は “学問の神様” 道真が主人公ですから、そんなファンタジーな物語ではありません。道真の知識と観察眼で事件の真相に迫ります。
業平との顔合わせで道長はホームズばりの観察眼を披露しています。
1巻 第1話~「在原業平少将、門上に小鬼を見る事」
女官失踪事件では、道長の学友で業平の縁者でもある長谷雄(はせお)が女官かどわかしの嫌疑をうけると、日頃は人を見下し落ちこぼれの長谷雄に悪態をつきながらも、理屈の通らぬことは放っておけず理不尽な世の中が許せない道長は、事件を解決しキッチリ落とし前もつけます。
事件を調べているとき、死体を初めて見た道長は吐いてしまい「生身のことは机上の書物のみではわかるまい」と業平に言われてしまいます。それでもしっかり観察してましたが。
策をねって調べ物をしていると、実際にやってみないとわからぬと気づく道真。
「…なるほど、私はまだ何も知らぬ」
学はあれども世間知らずな道真と、酸いも甘いも噛み分けた業平の異色コンビの活躍の始まりです。
1巻 第4話~「都を賑わす玉虫の姫の事」
道真の父上がなんだか天然キャラで可愛い。そして書物萌えの道真も可愛いです。
業平に相談されて巷で噂の玉虫姫の謎を探る道長。玉虫姫の屋敷前で死人が出たり、玉虫姫の入内話の裏には権力争いが絡んでたり。長谷雄もなんだかんだでつるんできます。最後は歌人業平の腕の見せ所。
「誰かの為につきとおす嘘もあるということだ」
玉虫姫の側付きだった漢詩のわかる女房 白梅(はくばい)を引き取った道真をからかう業平。
少年っぽい可愛さの白梅ちゃんは2巻で大活躍します。
2巻 第6話「怨霊出づる書の事」
相変わらず目つきも悪いが口も悪い道長。
大学寮の先生から物の怪のでる書物のことを聞き、真相を確かめるため長谷雄を実験台にする鬼畜っぷりが清々しい道長くんです。
2巻 第7話~「藤原高子屋敷に怪の現れたる事」
過去に業平といわくのある藤原高子の屋敷で物の怪騒ぎが起こる。
権力闘争で藤原家の重要な手駒である高子様に近づけない業平は道長を頼るが、面倒事に関わりたくない道長の代わりに白梅に白羽の矢をたてる。
高子様に面会しすっかり魅せられてしまう白梅ちゃん。なんとか道長を引っ張り出したい高子様はちょっと手荒い手段に出ます。肝が座ってます高子様。そして道長は珍しい書物や墨に釣られて協力してしまいます。出番の無かった業平に、
「高子殿、笑っておられましたよ」
性格悪そうな道長くん、ちゃんと人の心がわかるいいヤツじゃん。
2巻 第9話~「鏡売るものぐるいの事」
長谷雄が買った鏡を不審に思った道真。その鏡を売った男が乱心し書倉へ立てこもってしまう。
道真は駆けつけた業平に人払いをさせ、書倉の小窓から侵入し真相を突き止める。
「知っていることと出来ることは違う」
騒動のあと、流行病で死んだと聞かされていた兄の死に疑問を持った道真は…。